新井紀子さんの「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」を読みました。
ビジネス書大賞2019の大賞を受賞したので、多くの人が聞いたことがあるのではないかと思います。
著者の新井さんは、国立情報学研究所教授で、東ロボくんの開発者です。
今回はAI vs. 教科書が読めない子どもたちの内容や感想について簡単に紹介します。
本書の続編として「AIに負けない子どもを育てる」があります。
こんな人におすすめ
私は上のようなマインドマップを作り、本書を読みました。
上記のような興味を持つ人にはオススメの一冊です。
マインドマップで読書の質を高める方法は、メンタリストDaiGoさんの知識を操る超読書術で紹介されています。
本書の構成と内容
次に、AI vs. 教科書が読めない子どもたちの「構成」や「紹介されていること・いないこと」について紹介します。
紹介されていること
第1章 MARCHに合格―AIはライバル
第2章 桜散る―シンギュラリティはSF
第3章 教科書が読めない―全国読解力調査
第4章 最悪のシナリオ
AI vs. 教科書が読めない子どもたちは、上の4つの章から構成されています。
第1章では、
などの基本的な単語の解説やAIの歴史などが紹介されています。
第2章では、AIにできること・できないことなどが東ロボくんの挑戦などと合わせて紹介されています。
第3章では、全国読解力調査の結果や考察が紹介されています。
第4章では、なぜ勉強をするのか?から始まり未来予想図へと展開しています。
紹介されていないこと
AIについての基本的な知識は紹介されていますが、専門的な知識は紹介されていません。
初心者にはちょうどいい内容ですが、ある程度知識がある人は、専門書を読んだほうがいいかもしれません。
また、本書では子どもたちの読解力に焦点を当てていますが、それを高める方法については紹介されていません。
本書の内容と感想
AI vs. 教科書が読めない子どもたちの中で特に参考になった内容を、私のマインドマップと照らし合わせて簡単に紹介します。
AIについて詳しく知りたい!
AIに関連する知識で意外だったことが2つあります。
一般にAIと言われものは、正確にはAI技術なのだそうです。
真の意味でのAIとは人間と同等レベルの知能を持ったコンピュータのことです。
AI技術とは、AIを実現するために開発されている様々な技術のことです。
具体的には、
■音声認識技術
■自然言語認識技術
■画像処理技術
などがAI技術に当たります。
例えば、Siriでは音声認識技術や自然言語認識技術などが使われています。
また、シンギュラリティは来ないというのは意外でした。
シンギュラリティとは、真のAIが自律的に、自身よりも能力の高い、真のAIを作り出せるようになった地点のことです。
シンギュラリティが来ない理由は、AIはコンピュータ、つまり計算機にすぎず、計算しかできないからです。
真の意味でのAIを実現するためには、私たちの認識や事象を全て計算可能な数式に落とし込まなければなりません。
しかし、今できるのは「論理的・確率的・統計的に言えること」を数式にすることだけだそうです。
そして私たちの認識のすべてを論理、確率、統計に落とし込むのは不可能です。
結論、シンギュラリティは来ませんが、仕事を奪われなくてハッピーとはなりません。
シンギュラリティが来なくても、AIと差別化できなければ、多くの仕事は代替えされてしまうからです。
著者の新井さんは読解力や推論の能力に注目し、AIと人間の能力を調べて比較しています。
教科書が読めないのか?
新井さんは中高生の基礎的読解力を調べるために、RST(Reading Skill Test)を開発しました。
RSTは、
■係り受け
■照応
■同義文判定
■推論
■イメージ同定
■具体例同定
の6分野から構成されています。
AIの「係り受け」の正解率は80%を越え「照応」も研究が進んでいるそうです。
「同義文判定」はまだまだで、「推論・イメージ同定・具体例同定」は全く歯が立たないようです。
重要なのはAIが苦手な「同義文判定・推論・イメージ同定・具体例同定」がどれくらいできるかということです。
自分の基礎的読解力が気になる人は、本書の中にある6分野それぞれの例題を解いてみると参考になると思います。
細かい結果は置いといて、
2万5000人の読解力調査の結果の一部を紹介すると、
などがあります。
つまり、
ということになります。
教科書が読めない中高生が多くいることは驚きでした。
テストの点数が高くない生徒には、学習内容の理解が不十分な生徒と、テストの問題文の理解が不十分な生徒の2種類がいるのかと思いました。
読解力を1つにまとめず、6つの分野に分けて調べてくれているので、読解の中でも何を苦手としているのかが分かり、良かったです。
AIに勝つためには?
AIに代替えされない人はどれくらいいるのでしょうか?
オックスフォード大学のオズボーン准教授の2013年の研究によると、「アメリカの総雇用の47%は自動化のリスクにある」とされています。
残る仕事の共通点として新井さんは、
を挙げています。
これらはAIが苦手としている分野です。
また、意味を理解できる能力を持つ人材が求められると指摘しています。
世の中には情報が溢れていますから、読解能力と意欲さえあれば、いつでもどんなことでも大抵自分で勉強できます。
これは仕事のための勉強などをイメージしていると思いますが、なぜ学校の勉強をするのか?に対する答えもとても参考になりました。
三角関数や微分・積分は、一部の専門的職業を除き仕事には役立ちませんが、それを理解できる能力や、理解はできないまでも公式を憶えて問題を解ける能力は、仕事でも有効で汎用性があります。他の科目も同じです。世界史の年表を暗記する力や、記述式の問題に解答できる能力には汎用性があるのです。
メモの魔力の「ファクト→抽象化→転用」に似ているなと感じました。
三角関数(ファクト)を
理解する能力(抽象化)は
仕事でも使える(転用)。
汎用性の高い抽象化が重要でしたね。
まとめ
今回はこれらの内容について簡単に紹介しました。
シンギュラリティは来ないが、多くの仕事は代替えされる。
代替えされないためには、意味を理解する能力(読解力)が重要である。
ということが分かりました。
AI vs. 教科書が読めない子どもたちでは、読解力を高めるためにどうすればいいのかというところまで言及されていなかったので、AIに負けない子どもを育てるも読んでみたいなと感じました。
References
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