ポール・タフさんの「私たちは子どもに何ができるのか」を読みました。
学校などで働く「教育関係者」や子育てをする「親」におすすめの一冊です。
本書は、非認知能力の重要性を提唱した「成功する子 失敗する子」のアップグレード版の本になっています。
「私たちは子どもに何ができるのか」では非認知能力についての最新の研究を加え、どうすれば非認知能力を身に付けさせることができるのかというところまで紹介されています。
今回は、非認知能力とは何か?親や教育者は子どもに何ができるのか?について簡単に紹介します。
本書の構成と内容
まずは「私たちは子どもに何ができるのか」の構成と内容について紹介します。
本書で「紹介されていること」と「紹介されていないこと」を知ることで、自分の興味とのミスマッチを防ぐことができます。
紹介されていること
「私たちは子どもに何ができるのか」は23個の章から構成されています。具体的には、
非認知能力とは何か?
何が子どもの成長や成功を阻害するのか?
親は子どもたちに何ができるのか?
教育者は子どもに何ができるのか?
などの内容が様々な研究の結果をもとに、紹介されています。
紹介されていないこと
「私たちは子どもに何ができるのか」は非認知能力に焦点を当てた本です。
そのため認知能力である学力やIQを高める方法や勉強法については紹介されていません。
学力や勉強法については「進化する勉強法」や「超効率勉強法」などの本がオススメです。
本書の内容と感想
■非認知能力とは何か?
■親は子どもに何ができるのか?
■教育者は子どもに何ができるのか?
「私たちは子どもに何ができるのか」の中から上記の内容の一部と私の感想を簡単に紹介します。
非認知能力とは何か?
非認知能力とは、性格の強みなどの気質のことであり、学力などの認知能力よりも非認知能力の方がより良い人生を歩むうえで影響が大きいとされています。
具体的には「粘り強さ」「やり抜く力」「誠実さ」「自制心」「楽観主義」「好奇心」「内発的に取り組む意欲」などが非認知能力に含まれます。
認知能力と非認知能力の違いの1つに身に付け方の違いがあります。
学力などの認知能力は教わることで伸ばすことができるが、非認知能力は教えて伸ばすことができません。
非認知能力は環境を整えることで伸ばすことができるとされています。
認知能力よりも非認知能力の方が、人生を歩むうえで影響が大きいとされているのに、日本の学校では知識を詰め込み、認知能力ばかりを伸ばそうとしているように感じます。
非認知能力の方が重要であることを知らないからでしょうか?それとも非認知能力を伸ばす方法を知らないからでしょうか?
ここから先は、非認知能力を伸ばすためにはどのように環境を整えればいいのかを「親」と「教育者」のそれぞれの視点から紹介します。
親は子どもに何ができるのか?
親は子どもの非認知能力を伸ばすために何ができるのでしょうか?
本書の中では多くの方法が紹介されていますが、愛情をもってシングルタスク的に子どもに接することが一番大切であると感じました。
つまり、子どもと遊ぶときにはスマホをいじったり、他のことを考えたりするのではなく、目の前の子どもに集中することが重要です。
「サーブとリターン」が32ページで紹介されています。
子どもの泣き声・片言のおしゃべり・見ているものなど(サーブ)に親が「あらあら、悲しいの?」「そうね、ワンワンね」などとリアクションすること(リターン)です。
親にとっては何気ないことですが、子どもは親の反応によって世界を理解しようとしています。
そのため、乳幼児にとって「サーブとリターン」は世界のありようを知るための貴重な情報を含んでいると指摘されています。
親がスマホを見ていたために、子どものサーブをリターンできなければ、子どもは自分は大切にされていないと感じてしまうかもしれません。
子どもに注意を向け、積極的にリターンをしていきたいですね。
本書では他にも
「正しいアタッチメントと阻害要因」
「子どもの問題行動への対応方法」
「子どものストレスの対処を手伝える親は子に良い影響を与える」
などの内容も紹介されています。
本書でチェックしてみてください。
子どものストレスの対処を手伝うためには、科学的に正しいストレス解消法が100個も紹介されている鈴木祐さんの「超ストレス解消法」なども役立つと思います。
教育者は子どもに何ができるのか?
教育者は子どもの非認知能力を伸ばすために何ができるのでしょうか?
私が一番参考になった内容は「内発的動機づけを維持させる方法」です。
内発的動機づけとは「表面的な結果ではなく、その行動によって生まれる内発的な楽しみや意義が動機となること」です。
外発的動機づけとは「カネやモノなどのインセンティブが動機となること」です。
エドワード・デシのキューブ型パズルの実験やマック・レッパーのお絵かきの実験などで内発的動機づけの重要性が指摘されています。
内発的動機づけを維持するためには、
「有用感」
「自律性」
「関係性(人とのつながり)」
の3つが満たされる必要がある。とデシとライアンによる研究によって明らかになっているそうです。
これらの3つを満たすためにはどうすればいいでしょうか?
「自律性」を実感するのは、教師が「生徒に自分で選んで、自分の意志でやっているのだという実感を最大限持たせ」、管理、強制されていると感じさせないとき
「有用感」を持つのは、やり遂げることはできるが簡単すぎるわけではないタスク―生徒たちの現在の能力をほんの少し超える課題―を教師が与えたとき
「関係性」を感じるのは、教師に好感を持たれ、価値を認められ、尊重されていると感じるとき
「自律」については千代田区立麹町中学校の工藤校長も「学校の「当たり前」をやめた。」の中で強調していました。
自律は今後の教育のキーワードの1つになりそうですね。
「関係性」についてはメンタリストDaiGoさんの「コミュ障でも5分で増やせる超人脈術」で紹介されていた「アドバイスシーキング」や「アクティブリスニング」などの手法も使えるなと感じました。
「私たちは子どもに何ができるのか」では他にも、
「子の対立解消・ストレス対処法の取得」
「学業のためのマインドセット」
「ディーパーラーニングの実現方法」
なども紹介されています。気になる方はチェックしてみてください。
まとめ
■非認知能力とは何か?
■親は子どもに何ができるのか?
■教育者は子どもに何ができるのか?
今回は「私たちは子どもに何ができるのか」の構成や上記の内容について簡単に紹介しました。
本書を読んで、子どもの非認知能力を伸ばすためにできることは2つに分けられると思いました。
1.愛情を持ち、子どもを信じて、人間らしい扱いをすること。
2.子どもがストレスやトラブルなどを対処するときに手伝えように大人がスキルを持つこと。
子育てをする親、教育関係者など子どもと関わる大人には、是非読んでほしい一冊です。
私は、まず2つ目のスキルを身に付けたいと思います。