アクティブラーニングってなんで注目されているの?
アクティブラーニング型の授業を実践してみたいけどやり方がわからない。
このような疑問や思いを持っている方は大勢います。
新学習指導要領が施行される前に、この記事で一緒に確認しておきましょう。
今回の記事では、
■アクティブラーニングとは
■アクティブラーニングの意義
■アクティブラーニングの実践例・手法
■アクティブラーニングの先進校
の4つのテーマについて、それぞれ紹介していきます。
アクティブラーニングとは
まずアクティブラーニングの定義について確認しましょう。
2018年の中央教育審議会答申の中の用語解説では以下のように書いてあります。
大学等におけるアクティブ・ラーニングとは、一方向性による知識伝達型の学習方法ではなく、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2018/12/17/1411360_6_1.pdf
日本のアクティブラーニングは大学教育から始まりました。きっかけは、2012年の中央教育審議会答申「新たな未来を築くための 大学教育の質的転換に向けて」です。
その後、小学校や中学校、高等学校でも普及していきました。
新・学習指導要領でも「アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善」や「主体的・対話的で深い学びの実現」が求められています。
アクティブラーニングの意義
アクティブラーニングが求められる理由は2つあると思います。
1. 今後の社会で必要な力を付けるため
2. 学習定着率を高めるため
ぞれぞれについて詳しく見ていきます。
今後の社会で必要な力を付けるため
2012年の中央教育審議会答申では以下のように書かれています。
生涯にわたって学び続ける力、主体的に考える力を持った人材は、学生からみて受動的な教育の場では育成することができない。従来のような知識の伝達・注入を中心とした授業から、教員と学生が意思疎通を図りつつ、一緒になって切磋琢磨し、相互に刺激を与えながら知的に成長する場を創り、学生が主体的に問題を発見し解を見いだしていく能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要である。
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2012/10/04/1325048_1.pdf
また、キャリア教育ラボでは以下のように書かれています。
現在は情報化社会が進み、知識・情報・技術の変化するスピードが格段に上がり続け、質の高さや豊かさを重視した成熟社会に移行しつつあり、従来の組織や手法を前提とした生き方では時代に適応することが難しくなってきています。また、社会が多様化しテクノロジーが急激に発展することで、その場の状況や相手の価値観を理解しながら自分の考えをまとめて発言したり、相手にふさわしい表現で伝えたり、答えのない課題に向き合い他人と協調しながら解決することを求められることが増えています。
https://career-ed-lab.mycampus.jp/career-column/205/
今後の社会のキーワードとして
■VUCA
■Society 5.0
■知識基盤社会
■シンギュラリティ
■AI(人工知能)
などが挙げられます。
オックスフォード大学のオズボーン准教授の2013年の研究によると、「アメリカの総雇用の47%は自動化のリスクにある」とされています。
日本でもこれに近い割合の仕事が自動化されると予想されます。
このような世界に対応するためのヒントが「ダボス会議」にあります。
2016年のレポートでは「2020年に必要なビジネススキルTOP10」が紹介されています。
- 複雑な問題解決力
- クリティカルシンキング
- 創造力
- マネジメント力
- 人間関係調整力
- 心の知能
- 決断力
- サービスオリエンテーション
- 交渉力
- 認識の柔軟性
アクティブラーニングによって身に付きそうな力もありますね。
学習定着率を高めるため
上の図は「ラーニングピラミッド」です。
学習方法による知識の定着率を表したもので、アメリカ国立訓練研究所の研究から作製されました。
「グループ討議」「自ら体験する」「他の人に教える」などのアクティブラーニングでは、知識の定着率が高くなっています。
これらの学習方法以外にも「進化する勉強法」や「超効率勉強法」などの本では効果的な学習法が詳しく紹介されています。
知識を定着させたい人にはオススメです。
アクティブラーニングの実践例・手法
アクティブラーニングの実践例や手法を7つ紹介します。
最後には「失敗事例ハンドブック」も紹介します。
ミニッツ・ペーパー
生徒が授業のポイント・疑問点・理解度について記入し、教師はその内容を確認し、次の授業に活かしていくもの。
シンク・ペア・シェア
教師からの質問や問題に対して、生徒が個人で回答などを考えた後に、ペアを組んで互いにそれらを紹介し合うもの。
グループディスカッション
教師からの課題について、グループで討議するもの。
ジグソー法
あるテーマについて書かれた1つの課題や資料を、生徒グループの各メンバーに個別に担当させ、パートごとに話し合いながら知識や理解を深める。
その後、グループに戻ってから各パートの話を相互に伝えあい、ジグソーパズルを解くようにテーマ全体への理解を深め、課題を解決していくもの。
生徒授業
あるテーマについての考えや考察の結果などを生徒がそれぞれまとめ、生徒間で教授し教授しあうもの。
問題解決学習
答えが1つに決められていない問題や課題について、解決する経験を通して学んで行く学習方法。
Problem Based Learning
プロジェクト学習
実世界に関する解決すべき複雑な問題・問い・仮説を、プロジェクトとして解決・検証していくもの。
Project Based Learning
失敗事例ハンドブック
文部科学省の「アクティブラーニング失敗事例 ハンドブック」の失敗事例から学び、成功へとつなげていきましょう。
失敗は成功のもとです。
アクティブラーニングの先進校
アクティブラーニングを積極的に取り入れている先進校を3つ紹介します。
紹介する内容のすべてをあなたの学校で実現するのは難しいかもしれませんが、少しでもマネできるところから始めていきたいですね。
ミネルバ大学
ミネルバ大学は世界中から注目されている大学で、合格率は2%以下という超難関校です。
ミネルバ大学には以下のような特徴があります。
- 「Active Learning Form」と呼ばれる独自の学習プラットフォームにより授業が行われる。インターネット接続環境と講義に集中できる場所であれば、どこでも受講可能。
- キャンパスや図書館等の設備を排除し、教員人件費と学習プラットフォームにリソースを全て割いている。
- 全寮制(4年間で世界7都市の寮をめぐる)
- 学生は各地でインターンシップに参加。
ミネルバ大学の授業はオンライン上での、ディスカッション、分析、グループワーク、プレゼンテーションなどが中心に行われます。
教師の役割は、ファシリテーションや学生のパフォーマンスのチェックで、教師が授業中に10分以上話すと警告を受けるそうです。
授業の様子がYoutubeにアップされています。
千代田区立麹町中学校
麹町中は工藤勇一校長のもと、さまざまな教育改革を行っています。例えば、
■宿題の廃止
■定期考査の廃止
■固定担任制の廃止
■服装・頭髪の指導の廃止
などです。
アクティブラーニング関連の取り組みでは、
■明確な目的を持った宿泊研修
■企画型の取材旅行
■クエストエデュケーション
■麹中アフタースクール
■数学授業でのAI型教材「キュビナ」
などが挙げられます。
工藤校長の「学校の「当たり前」をやめた。」は名著であり、教育関係者は必読の一冊です。
先程あげた取り組みについても詳しく解説されています。
大阪府立箕面高校
箕面高校は海外大学への進学者を多数輩出して注目されている大阪府の県立高校です。
2017年には累計36人が海外の大学に合格しました。
合格した大学の中には、東京大学よりも大学ランキングが上位であるメルボルン大学などを含みます。
また、日本の一条校で初めて「ミネルバ大学」の合格者を出した高校でもあります。
箕面高校ではどのような取り組みをしているのでしょうか?
箕面高校の前校長の日野田直彦さんの著書「なぜ「偏差値50の公立高校」が世界のトップ大学から注目されるようになったのか! ?」の中から取り組みの一部を紹介します。
■マインドセットのための土曜特別講座
■教室の壁がホワイトボード
■アントレプレナーシップ ボストン短期留学
■海外トップ大学生との冬季キャンプ
■PBL
■1時間に15分以上話している先生は、自分は頭が悪いと言っているのと同じ
まとめ
■アクティブラーニングとは
■アクティブラーニングの意義
■アクティブラーニングの実践例・手法
■アクティブラーニングの先進校
今回は上記の内容について紹介しました。
みなさんがアクティブラーニングを実践するときの手助けになれたら幸いです。
本当はもっと書きたいこともありましたが、長くなってしまうので止めておきます。
もっと詳しく知りたい方は下記の引用リストなども参考にしていてください。
References
▼https://education-career.jp/magazine/data-report/2016/activelearning/
▼http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2018/12/17/1411360_6_1.pdf
▼http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/01/14/1354191.pdf
▼https://www.nucba.ac.jp/active-learning/
▼https://www.nucba.ac.jp/archives/151/201507/ALshippaiJireiHandBook.pdf
▼https://career-ed-lab.mycampus.jp/career-column/205/
▼http://www.shibuya-univ.net/report/detail/1003/
▼http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/11/22/1407073_01_1_2.pdf
▼https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
▼https://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf
▼https://www.businessinsider.com/wef-report-skills-workers-need-2016-1#10-cognitive-flexibility-will-continue-to-be-an-important-skill-1
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▼https://youtu.be/Gk5iiXqh7Tg